リニアアクチュエータの推進力解析

事例概要

特定の周期で一定のストロークの直線往復運動を行うラジアルギャップ型リニア振動アクチュエータは、高い伝達効率、コンパクトな構造、低騒音などの利点を持ち、人工心臓、ポンプ、冷凍機、コンプレッサーなどの用途に使用されている。
アクチュエータの磁束経路と可動子の変位は半径方向、軸方向、円周方向に及ぶため、解析には3次元シミュレーションが必要となる。本事例では、磁石長の相違によりモータのスラスト方向の推力とストロークに及ぼす影響を解析する。

Fig1

解析条件)

駆動条件:入力電流 DC-1A/相
ストローク動作時間:4ms (設計ストローク時間範囲1~3ms)
*設計ストローク:-10mm~10mm
磁石長さ変長幅:-1mm、+3mm、+7mm(60mm幅基準)
*磁石長さを変数設定し、上記3通りの変長幅で演算を実行

解析結果)

設計ストローク域内での磁束密度を解析した。当該モータの駆動条件で磁束界磁回路上での磁気飽和発生の有無を確認し、1(T)強の磁束密度との結果となり、磁気飽和は発生せず磁束界磁は安定していることが分かった。

Fig2

磁石長の相違がスラスト方向に於ける推進力とストローク範囲への影響を解析した結果を下記に示す。
設計ストローク-10mmから10mmをカバーする10000msから30000msまで、3つのケースでほぼ同じ一定推進力が得られることが分かった。下図の赤色プロットの磁石長のケース(Step1)では、材料(磁石)長が最も短いが、安定した推進力のストローク範囲は10000msから30000msまでほぼ一定である。この範囲外では推進力が大きく変化(他2ケースと比較して減少方向)するため、安全な動作マージンはないものと判断される。 青色プロットの磁石長のケース(Step3)では、設計ストローク範囲内での10000ms付近と30000ms付近での推進力変動が他2ケースよりも大きく(推進力の急激な立ち上がり)、この点で設計要件を満たしていない。緑色プロットの磁石長のケース(Step2)では、設計ストローク範囲内全域で推進力が安定しており、この範囲外にても推進力の変動形態が他ケースの中間となっている。
上記解析結果から、磁石材料費と動作上での信頼性を考慮すると、緑色プロットの磁石長のケース(Step2)が最適であると判断される。

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